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2008年度インターナショナル・ワイン・チャレンジ日本酒部門審査報告

                                    
酒サムライ本部 代表 佐浦弘一

 
本年のインターナショナル・ワイン・チャレンジ日本酒部門の審査は4月15日、16日の2日間に渡って、英国ロンドン市内中心部バービカンセンターにて開催されました。

バービカン・センター内に保管されている9000銘柄を超える世界中から集まった出品酒

 本年は昨年を大きく上回る160蔵313銘柄の日本酒が出品され、主催団体からも大きな期待が寄せられました。

 
本年の審査には、酒サムライ本部の推薦により日本から派遣された3名の審査員を含む5名のシニア・ジャッジ、またロンドンを中心にヨーロッパ各地より20名の審査員、そして酒サムライ本部を代表して私佐浦も審査に加わり、合計25名での審査となりました。また、2006年に酒サムライに叙任された米国サンフランシスコにある米国初の日本酒専門店トゥルーサケのオーナー、ボー・ティムケン氏もシニア・ジャッジとして参加しました。26名の審査員リストは次の通りですが、皆さんいずれも各地で日本酒の販売またはサービス等に関わっている方、または日本酒に強い関心を持ち豊かな経験を持つ方々ばかりです。

IWC2008 SAKE JUDGES
SeniorJudge 大橋健一 株式会社山仁酒店 取締役副社長
SeniorJudge 君嶋哲至 株式会社横浜君嶋屋 代表取締役社長
SeniorJudge サイモン・T・ホフストラ サケ NLディレクター
SeniorJudge 高橋康次郎 日本酒造組合中央会 技術顧問
SeniorJudge ボー・ティムケン トゥルー・サケ オーナー
Judge 稲葉智章 Zuma レストラン ソムリエ
Judge 今野英之 田崎フーズ セールス・マネジャー
Judge エマ・ダルトン エマ・ダルトン ファイン・ワイン
Judge 大久保里美 Zuma レストラン ソムリエ
Judge オーケ・ノードグレン あけぼの ソムリエ
Judge クリスティーヌ・パーキンソン ハッカサン グループバイヤー
Judge クリス・ヒューズ 田崎フーズ
Judge 佐浦弘一 酒サムライ代表
Judge ジャン・ルイ・ナバイヨン Sumosan レストラン ヘッドソムリエ
Judge 田渕浩史 メルシャン株式会社欧州事務所長
Judge 丹波久美子 Umu レストラン ヘッドソムリエ
Judge 長谷川ゆか 日本酒ジャーナリスト
Judge ポール・マスターズ 英国日本酒協会
Judge マチュー・ガロス パシフィック・オリエンタル
Judge 松本ほなみ Sumosan レストラン ソムリエ
Judge 吉武理恵 クラーレット、酒サムライ英国代表
Judge リチャード・ウェイス ウィザード・ドリンクス
Judge ローラ・パトリー Meze レストラン ヘッドソムリエ
Judge 渡辺彩子 幸レストラン オーナー
Judge 渡辺さやか Zuma レストラン ヘッドソムリエ


 
初日の審査では、はじめに酒サムライ英国代表でありIWC日本酒部門の運営に当たりIWC事務局とのコーディネートを務めていただいた吉武理恵氏から、審査にあたっての簡単な注意事項の説明がありました。

酒サムライ英国代表吉武理恵氏による注意事項の説明

 その後26名の審査員がシニア・ジャッジをチームリーダーとする5つのチームに編成され、全313銘柄の出品酒はそれぞれ5つのチームに割り当てられ、1つのチームが60銘柄前後の出品酒を審査しました。それぞれの出品酒はビニールに包まれて銘柄がわからない状態で、同じ出品区分のもの10銘柄前後が一度に審査テーブルに準備されます(それらを1フライトと呼びます)。

ビニールにくるまれて審査される出品酒

 それらを1チーム5名〜6名の審査チームがまず全部をテースティング、各自がそれぞれを採点。チーム全員が1フライトのテースティングを終了してからシニア・ジャッジの進行のもとにそれぞれの出品酒についての点数発表と講評を行います。各出品酒に対するそのチームの評価はその際に合議形式で行われます。意見が分かれた場合は最終的にはチームリーダーであるシニア・ジャッジが決定しますが、その際にIWCのコー・チェアマンであるサム・ハロップ氏(2006年度酒サムライ叙任者)の意見を求め評価の参考とすることもありました。

審査風景

 それぞれの出品酒は確定された点数により、金メダル(95点〜)、銀メダル(90〜94)、銅メダル(85〜89)、大会推奨(80〜84)として表彰の対象となります。なお、審査はワイングラスによって行われ、出品酒の品温は約15℃前後でした(ワインを含む全出品酒は、3月20日頃のバービカン・センター納品から約2週間にわたるIWCの審査期間中まで、空調された会場で保管となります。だいたい審査時の品温と同様の温度帯での保管であったと思われます)。

 
上述のように313銘柄の出品酒は1つのチームだけに審査されるため、審査レベルの調整のために、審査後にもう一度全出品酒がサム・ハロップ氏によって再テースティングされ、場合によっては評価が引き上げられた出品酒もあったようです。

 
なお、15日夕刻より約2時間にわたって、IWC主催酒サムライ本部協力による日本酒セミナーが開催され、シニア・ジャッジとして参加された大橋健一氏による日本酒の製造工程を中心とするセミナー、またボー・ティムケン氏による米国での日本酒販売事情のスピーチがありました。IWCのスタッフや日本酒部門の審査員、その他日本酒に関心のあるワイン部門の審査員やジャーナリスト等も含め約50名ほどが参加しました。

大橋健一氏とボー・ティムケン氏による日本酒セミナー

 翌16日は、前日に金メダル評価を受けた出品酒の念審と、各出品区分のトロフィー受賞酒(各出品区分の最優秀評価)、またチャンピンオン・サケ(全出品酒の最高評価)選定のためのテースティングが、サム・ハロップ氏とシニア・ジャッジだけで開催されました。前日と同様、テースティングする出品酒はすべてブラインド状態です。私と酒サムライ英国代表吉武氏の2名はオブザーバーとして審査を見守りました。

緊張感漂う第2日目の審査風景

 審査に先立ち、ハロップ氏は審査の要点として「インテンシティ(Intensity)、ピュアリティ(Purity)、バランス(Balance)を考慮して審査にあたって欲しい」と述べました。訳すると「香味の際立ち、純粋さ、調和」ということでしょうか。まず、前日の審査で金メダル候補となった銘柄が、出品区分ごとにワイングラスに注がれて審査員の前に提供されます。ハロップ氏とシニア・ジャッジがそれをテースティング、採点します。

その後にハロップ氏がそれぞれの銘柄が金メダルにふさわしいかどうかをシニア・ジャッジ達に評価を求めます。そして金メダルにふさわしいとなれば今度はトロフィーに該当する品質の出品酒はあるか、あるならばどの出品酒がふさわしいかの評価が求められます。そして結果は多数決によって決められました。トロフィー受賞銘柄決定にあたっては、いくつかの出品区分で甲乙つけがたい出品酒があったため、各出品区分のトロフィーに準じるものとして「リージョナル(地域)トロフィー」表彰を授けることとなりました。

 
そして最後にトロフィー受賞酒がもういちど審査員に提供され、そのなかから本年度の最高評価である「チャンピオン・サケ」が同様の手順で決定されました。トロフィーおよびチャンピオン・サケ審査はハロップ氏の冷静でプロフェッショナルな采配によって進められ、オブザーバーとして審査を見守った(テースティングもしましたがもちろん審査には反映されません)私にもその場の緊張感と高揚感が感じられ、チャンピオン・サケが決定したときには、酒サムライ本部代表として、安堵感を覚えました。


 
なお、メダル受賞酒の発表は5月20日、トロフィー受賞酒の発表は6月17日、またチャンピオン・サケの発表は9月3日となります。メダルおよびトロフィーの発表は酒サムライのHP上でもIWCによる発表とほぼ同時に行いますので、是非ともご期待下さい。


IWC2008出品数(計160蔵 313銘柄)
(1) 純米酒の部 (出品は63蔵  73銘柄)
(2) 純米吟醸酒・純米大吟醸酒の部 (出品は99蔵 122銘柄)
(3) 本醸造酒の部 (出品は13蔵  13銘柄)
(4) 吟醸酒・大吟醸酒の部 (出品は67蔵  73銘柄)
(5) 古酒の部 (出品は29蔵  32銘柄)


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